中間利息控除が民法に規定され、利率が3%になる!

「中間利息控除」については、聞き慣れない方も多いでしょうが、交通事故などで逸失利益や将来の介護費用など、将来得られるはずの所得や将来支出するはずの額を算定するときに、将来得られるはずの金額の合計額を現在価値に引き直すために、中間利息を差し引くことをいいます。逸失利益というのは、後遺障害や死亡によって、将来得られたはずの所得が得られなくなったことによる損害です。

もともと中間利息控除は民法に規定がおかれていないものの、裁判、実務で定着していたものだったのですが、今回の改正で民法にはじめて以下のような規定がおかれました。

【改正後の民法417条の2】
(中間利息の控除)
第四百十七条の二 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。

たしかに、交通事故によって毎年500万円の収入を10年間失ったと仮定した場合、逸失利益として5000万円を今受け取って、定期預金、投資信託、株などで10年間運用すると、実際には10年後に5000万円を超える金額を取得することが可能になってしまいます。
そこで、毎年一定額の元金を受けとって順次一定の利率(複利)で運用に回していって、10年後に元金と運用利益を合わせた金額の合計が5000万円になるように、一定の利率で現在価値に引き直して損害額を決める必要があるのです。

その計算をしやすくするために、交通事故の裁判、実務では主にライプニッツ係数という係数が使われておりました。上記の例では、10年のライプニッツ係数(利率5%・複利計算)は7.722ですので、500万円×7.722=3861万円となります。

 

また、これまで、この中間利息控除の利率については、(改正前の民法で定める)民事法定利率である5%を用いるのか、金融情勢から3%などもっと低い利率を用いるのかについて裁判で争点になることがありましたが(※最高裁平成17年6月14日判決以降は民事法定利率5%とする取扱いが定着していました。)、今回の民法改正によって、「損害賠償請求権発生時点の法定利率」と明確に定められました。
上記の例では、利率3%での10年のライプニッツ係数(複利計算)は8.530ですので、500万円×8.530=4265万円となり、大幅に増額となります。

 

したがって、今回の民法改正で法定利率が5%から3%に減少することに伴って、損害額全体に対する遅延損害金の利率が下がるため、この点では減額となるものの、逸失利益や将来の介護費用など将来の損害については、複利で控除されていた部分の利率が下がるため結果的に増額となります。

そのため、今回の民法改正は、法定利率に関しては、将来にわたる損害項目があってその額が大きい場合(重大事故)には増額に、将来にわたる損害項目がない、あるいはその額が小さい場合(比較的軽微な事故)には多少の減額になるのではないかと思われます。

 

 

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