生活保護受給者が交通事故の被害者になった場合に、知っておくべきポイント

交通事故の発生後の状況

生活保護を受給している方が交通事故の被害にあった場合、どうなるかご存じでしょうか?

生活保護受給者は交通事故の損害賠償金を受け取っても、それを全て市などに返さなくてはならないかのようなことがインターネットに書いてある場合もありますが、やや不正確な記事も多いので、要注意です。

基本的には、生活保護受給者でも損害賠償請求権があるので、相手方や保険会社から損害賠償金を受け取ることができます。
しかし、生活保護受給者は事故の時点から損害賠償請求権という資産を保有していたことになるため、損害賠償金を受け取った段階で、その金額の範囲内で、事故日からそれまでの間に受給していた一定の生活保護費を市などの決定にしたがって返還しなければなりません。また、相当な損害賠償金が手元に残る場合には以後、(少なくとも一定期間)生活保護の受給ができなくなるおそれがあります。
なお、正確には、生活保護受給者は「損害賠償金」を市などに返しているわけではなく、返還しなければならない「生活保護費」相当額を損害賠償金の中から支出しているということになります。

 

ところで、生活保護受給者の休業損害や後遺障害逸失利益については、注意しなければならない点があります。

生活保護費は労働に関係なく得られる所得(不労所得といいます。)で、通常は交通事故によって生活保護受給者が生活保護費を得られなくなるわけではないため、生活保護受給者に休業損害が認められないのが原則なのです。
ただし、家族のある専業主婦の場合には、家事従事者として女性労働者の平均賃金を参考に休業損害が認められるのが一般です。

また、後遺障害逸失利益についても休業損害と同じような考え方があります。

ですので、被害者が生活保護受給者の場合には、残念ながら通常よりも損害賠償額が低めになることが多くなってしまいます。

以上、生活保護受給者が交通事故被害者になった場合に、知っておくべきポイントでした。

 

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