保険会社や相手方から提示された過失割合が正しいか分からない、どうしてこんな過失割合になるのか根拠が分からない、こんな方はまず自分の方で過失割合について調べてみましょう。
過失割合は、最終的には交通事故裁判の判決で裁判官が判断することにはなるのですが、示談の段階でも、裁判の段階でも、「別冊判例タイムズ 38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という本(以下「別冊判タ」とします。)にもとづいて、それぞれの事故の過失割合が判断されるのが通常です。
この別冊判タは、昔からたくさん行われてきた交通事故裁判の結果をふまえて作成されているため、示談の段階でも裁判でも、基本的に別冊判タに定められている過失割合を無視することはできないのが実情なのです。
この別冊判タには、さまざまな事故形態ごとに、基本的な過失割合とその修正要素を記載した図表が数多く(別冊判タ(全訂5版)では【1】図から【338】図まで)掲載されています。もちろん、全ての形態の事故が網羅されているわけではありませんが、版を重ねるごとに充実してきています。
この別冊判タ(全訂5版)の目次をざっと見てみると、
第1章 歩行者と四輪車・単車との事故
第2章 歩行者と自転車との事故
第3章 四輪車同士の事故
第4章 単車と四輪車との事故
第5章 自転車と四輪車・単車との事故
第6章 高速道路上の事故
第7章 駐車場内の事故
というように、まずおおまかに車両の種類等で分けて章ごとに掲載されていることが分かります。
次に、例えば「第3章 四輪車同士の事故」の目次をもう少し見てみると、以下のようにおおまかな事故形態ごとに分けて掲載されていることが分かります。
1 序文
2 交差点における直進車同士の出会い頭事故
3 交差点における右折車と直進車との事故
4 交差点におけるその他の態様の事故
5 道路外出入車と直進車との事故
6 対向車同士の事故(センターラインオーバー)
7 同一方向に進行する車両同士の事故
8 転回車と直進車との事故
9 駐停車車両に対する追突事故
10 緊急自動車と四輪車との事故
さらに、上の「2 交差点における直進車同士の出会い頭事故」の目次をもう少し見てみると、以下のように事故形態ごとに分けて図表が掲載されていることが分かります。
(1)信号機により交通整理の行われている交差点における事故
ア 青信号車と赤信号車との事故【98】
イ 黄信号車と赤信号車との事故【99】
ウ 赤信号同士の事故【100】
(2)信号機により交通整理の行われていない交差点における事故
ア 同幅員の交差点の場合【101】
イ 一方通行違反がある場合【102】
ウ 一方が明らかに広い道路である場合【103】
エ 一方に一時停止の規制がある場合【104】
オ 一方が優先道路である場合【105】
カ 一方道路車両用信号赤色表示と押しボタン式歩行者信号青色表示(交差道路の車両用信号なし)の交差点の場合【106】
別冊判タではこのように事故形態ごとに細分化されており、事故形態のイメージ図も掲載されているので、目次とイメージ図を見ながら、まず自分の事故がどの図表に当てはまるかを調べて基本の過失割合を把握し、次にその表に掲載されている修正要素の有無を判断することで、おおまかに自分の事故の過失割合を推測することができます。
たとえば、上の「(1)ア 青信号車と赤信号車との事故【98】」では、
基本 0(A):100(B)、
つまり青信号車(A)の基本的過失0%、赤信号車(B)の基本的過失100%となっておりますが、以下の5つの修正要素が掲載されています。
(A)に何らかの過失あり又は(B)の明らかな先入 : +10
(A)に著しい過失 :+10
(A)の重過失 :+20
(B)の著しい過失 :−5
(B)の重過失 :−10
したがって、仮に自分の事故がこの【98】図が適用される事故形態であったとして、自車が青信号車であったが、赤信号車が先に交差点に入っていたのであれば、自分の過失割合が10(=0+10)%、相手方の過失割合が90%になりそうだと推測することができます。
別冊判タは一般書籍ですのでどなたでも購入できますが、わざわざ買うのはもったいない、あるいはやはりまずは専門家の意見を聞きたいという方は、お気軽に当事務所に法律相談の申込みをしてください!