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【損害】後遺障害逸失利益の労働能力喪失割合はどのように決められるのか

2018-04-11

前回お話ししたとおり、後遺障害逸失利益の基本的な算定方法は、以下のとおりです。

(基礎収入)×(労働能力喪失割合)×(ライプニッツ係数)

今回は、労働能力喪失割合について説明していきます。

 

基本的には、自賠責あるいは裁判所で認定された後遺障害の等級に応じて、労災に関する労働基準局の通達に準じて、以下のように決められることになります。

1級〜3級             100%

4級                         92%

5級                         79%

6級                         67%

7級                         56%

8級                         45%

9級                         35%

10級                      27%

11級                      20%

12級                      14%

13級                      9%

14級                      5%

 

もっとも、以上の取扱いは原則についての話であり、実際の交通事故裁判では、後遺障害の部位・程度、実際の減収の程度、被害者の性別や職業等を総合考慮のうえ、例外的に上記の割合と異なる割合出認定されることも(例外的にですが)あります。
つまり、上記の労災の基準よりも高い労働能力喪失割合が認定されることも、低い労働能力喪失割合が認定されることもあります。
そのような認定をした裁判例は、数としてはかなりの数あります。

 

ところで、交通事故の被害者に外見に目立つ傷跡、治療痕が残ってしまった場合、こういった傷跡、治療痕については一般に、醜状痕(しゅうじょうこん)、外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)と呼ばれています。

醜状痕については、必ずしも実際の労働能力に影響があるわけではないので、後遺障害に該当しないかのようにいわれる場合もありますが、一定以上の醜状痕については、後遺障害認定を受けることで、後遺障害慰謝料が認められます。

被害者の職業等によっては後遺障害逸失利益についても認められる場合がありますが、労働能力喪失割合については上記の労災の基準がそのまま適用されないケースが多くなることに注意してください。

 

以上、労働能力喪失割合について、基本的な考え方を説明いたしました。

後遺障害が残りそうな被害者の方は、早めに当事務所にご相談ください!

【損害】後遺障害逸失利益の基礎収入(給与所得者、事業所得者、主婦)

2018-03-14

後遺障害逸失利益の基本的な算定方法は、以下のとおりです。

(基礎収入)×(労働能力喪失割合)×(ライプニッツ係数)

まず、基礎収入について説明していきます。

 

給与所得者、事業所得者、主婦については、基礎収入は休業損害の場合と基本的には変わりません。
なお、給与所得者の場合は休業損害証明書ではなく、事故前年の源泉徴収票、確定申告書等に基づいて基礎収入を認定することが基本となります。

 

ただし、給与所得者、事業所得者のうち、概ね30歳未満の若年者については、事故前年の実際の収入を基礎とするのは必ずしも適切ではありません。

後遺障害逸失利益は、事故による後遺障害によって(労働可能年数までの全部又は一部の)長期間にわたって失われた利益ですから、若年者の実収入を基礎収入とすると、その後の昇給(に応じた逸失利益)が考慮されない結果になるためです。

そこで、若年者の実収入額が賃金センサスの全年齢・平均賃金(学歴計または大学卒)を下回る場合でも、年齢、職歴、職種、資格、同業者や勤務先の収入状況(平均賃金)、実収入と全年齢・平均賃金との乖離の程度等を考慮して、その事故がなければ、将来的に生涯を通じて全年齢・平均賃金を得られたはずであるとの蓋然性があると認められれば、その全年齢・平均賃金を基礎収入とすることが交通事故裁判では一般的に行われています(裁判前の段階では、相手方の損害保険会社がこれを認めてくれるかどうかは定かではありません。)。

その他、実情に応じて、学歴別の全年齢・平均賃金が採用されたり、年齢別の学歴計・平均賃金が採用されることもあります。

 

以上、給与所得者、事業所得者、主婦の基礎収入について、基本的な考え方を説明いたしました。

後遺障害が残りそうな被害者の方は、早めに当事務所にご相談ください!

【損害】主婦でも休業損害が認められます

2018-02-21

専業主婦については通常、給与収入や所得があるわけではありませんが、家事も金銭的価値のある労働ですので、一定の休業損害が認められます(なお、もともと収入がない学生や無職の方、年金受給者や不動産オーナーなど働かずとも収入がある方については、原則として休業損害は認められません)。

この場合、いわゆる賃金センサス(賃金構造基本統計調査)の女性全年齢平均賃金から基礎収入(日額)を算出するのが一般です。

休業日数については、サラリーマンのような休業損害証明書がありませんが、(事故後一定期間における)入通院の実日数を休業日数とするのが一つの方法となるでしょう。この点について、相手方との意見の食い違いが生じやすくなるのはやむを得ません。

 

さて、兼業主婦の場合はどうかというと、実際の収入が上記の女性全年齢平均賃金を上回っている場合には実際の収入を基礎収入とし、下回っている場合には女性全年齢平均賃金を基礎収入として休業損害が計算されるのが一般です。

中には、家事も仕事も人一倍頑張っているから、実際の収入に女性全年齢平均賃金を足した合計額を基礎収入とすべきだと主張される方もいらっしゃいますが、そういった手法は裁判では通常採用されないことになります。

主婦の休業損害に関する基本的な考え方、お分かり頂けましたでしょうか。

相談したいことがあれば、当事務所にお問い合わせください。

【損害】無職者の休業損害について

2018-01-10

休業損害は、交通事故被害者が事故によってやむなく休業することによって発生した減収のことですから、交通事故被害者が事故当時無職で、交通事故によって休業や収入減少が生じない場合には、休業損害は認められないことになります。

 

しかし、無職といっても人によって事情は様々であり、交通事故裁判でも無職者について休業損害が認められる場合があります。

一般的には、被害者に労働の意欲と能力があって、(休業期間内に)就職できる可能性があった場合には、休業損害が認められることとされています。

 

労働の意欲という点では、事故当時現に求職活動をしていたことを立証すればよいでしょう。

労働の能力という点では、前の会社での勤務実績・収入、年齢、資格などが考慮されることになります。

就職の蓋然性という点では、事故当時就職が内定していたことが立証できればよいですが、それ以外でも、事故当時は内定していなかったものの、(怪我の影響で遅れはしたものの)事故後しばらくして就職が決まったような場合でも、休業損害が認められる可能性が十分あるでしょう。
また、事故当時若くて健康で、就職活動を行っていた学生については、一般的に就職の蓋然性は認められやすいといえます。

 

ところで、無職者の休業損害を算定する際の基準となる収入については、事故当時就職が内定していた場合や間もなく就職先が決まった場合には、主にその就職先の給与額や統計上の平均賃金が参考にされ、そうでない場合は、主に退職・失業前の収入や統計上の平均賃金などが参考にされることになります。

 

なお、前提として事故による怪我の治療がある程度長期間に及んでいることが必要であるとされていますので、ご注意下さい。

 

このように、無職者についても事情によって休業損害が認められることがありますが、そのためには立証活動がかなり重要となります。

無職だから休業損害は認めない、と相手方(保険会社)に言われてお悩みの方は、当事務所にご相談ください!

【損害】葬儀関係費について

2017-12-21

死は誰にでも訪れるものですが、不幸にも交通事故で被害者がお亡くなりになり、相続人が加害者に対して損害賠償請求をするときは、その葬儀関係費用が一定程度、交通事故による損害として認められ、損害賠償の対象となります。

裁判では、特段の立証をしなくても、およそ150万円程度が損害として認められることになります。
それ以上の出費やその出費を要した特別な理由などを立証すれば、これを上回る金額の認定がされる場合もあります。

以下は、注意点です。

・お墓の建立費、仏壇仏具の購入費などを葬儀関係費と別に請求することはできません。

・香典返しの費用については、そもそも損害と認められておらず、受け取った香典を葬儀関係費などの損害から差し引くこともありません。

以上、死亡事故の損害のうち、葬儀関係費についての説明でした。

死亡事故の損害賠償でお悩みのご遺族は、当事務所にご相談ください。

【損害】定期券、タクシー、自家用車を利用した場合の交通費は賠償してもらえるか

2017-12-05

交通費は、通院のための実費が交通事故による損害額として認められるのが原則です。

 

たとえば、事故前から持っている通学・通勤の定期を利用して通院したため、実費を支払っていない場合には、原則として交通費は損害と認められないことになります。

 

また、タクシーで通院した場合はタクシー代が損害となりますが、タクシーを利用するまでの必要性、相当性が認められなければ、電車、バスなどの公共交通機関の運賃が損害額とされることがあります。単にタクシーが楽だ、便利だという理由でタクシーを利用していると、自分の持ち出しが増えてしまうので、要注意です。

 

それでは、自家用車で通院した場合は、実費が明確ではないため、交通費が賠償されないのかというと、そうではありません。

裁判や交通事故実務では、1km当たり15円前後のガソリン代や、駐車料金、高速代が損害として認められることが多いと思われます。

もっとも、車で通院していても病院が自宅から非常に近くで歩いて通えた場合や、病院までの距離はあるけれども実際には自転車で通院していたという場合には、交通費は損害として認められないと思われます。

 

以上、交通費の賠償に関して気になる点として、定期券、タクシー、自家用車を利用した場合の交通費について記事を書いてみました。

交通事故被害者の損害賠償請求について分からないことがあれば、当事務所の法律相談に申込みをしてください!

【損害】事業所得者の休業損害は賠償してもらえるか

2017-11-16

本日は、なかなか簡単に認めてもらえない場合が多い、事業所得者の休業損害に関する記事です。

いわゆるサラリーマン(給与所得者)が交通事故の被害者である場合は通常、勤務先の休業損害証明書や源泉徴収票等により、休業損害の計算に必要となる休業期間と基礎収入の立証が可能です。

 

では、自営業の事業所得者の場合はどうでしょうか?

裁判や損害賠償の本では大体、事業所得者については、「現実に休業し、そのために現実に収入減があった」ような場合には、休業損害の賠償が認められることになっています。

しかし、入院をしていない場合に、休んだ期間は誰が立証してくれるでしょうか(通院日は立証できるでしょうが・・・)?
また、自営業者の場合には毎年の収入が大きく変動する場合も多く、交通事故の怪我による休業が原因で収入が減少したことを立証することは、常識的に考えても簡単ではない場合が多いのではないでしょうか?

 

もちろん、後遺障害が認定された事案であれば、怪我や後遺障害の重さに応じて、事故後症状固定時までの期間の全部又は一部について休業損害が認められるのが通常でしょうが、後遺障害が認定されなかった事案では、示談段階では休業損害について相手方保険会社が容易に認めないことも多いと思われます。

 

事業所得者の休業損害について少しでも賠償してもらうおうと思うのであれば、早めの準備が必要になる場合が多いので、事故後早めに当事務所にご相談ください!

【損害】治療費〜整骨院・接骨院の施術費等についての説明

2017-11-07

人身事故による損害(人損)の典型例として治療費があげられます。

病院での入院、通院費のみならず、病院の個室に入院した際の差額ベッド代も必要かつ相当な範囲で損害賠償の対象となります。

通院治療費は原則として、症状固定日までの分が損害賠償の対象となり、それ以降の分は損害賠償の対象とならないことにご注意下さい。

 

それでは、整骨院、接骨院での施術費についてはどのように扱われることになるのでしょうか。

東洋医学の施術は西洋医学の治療とは異なり、医学的根拠が必ずしも十分ではなく、(症状の軽減、痛み緩和目的で行う)対処療法であって根本的な治療効果があるとはいいがたいなどの理由で、損害賠償の実務、裁判においては、原則として医師の指示がある場合や、症状の内容からみて施術が必要かつ相当な場合に限って、損害賠償の対象として認められることになっています。

裁判では、医師の指示(や許可)がない場合であっても、施術の必要性、有効性、合理性、期間・費用の相当性などを考慮したうえで、施術費の全部を損害と認める、一部のみ損害と認める、あるいは損害と認めない(慰謝料増額の要素としてのみ考慮)、などの判断がされることになります。

もっとも、個人的には、整骨院、接骨院での施術が一般化したためか、以前よりも、裁判や交渉段階で特に争点になることなく、整骨院等の施術費が病院の治療費と同様に損害賠償の対象となり、また整骨院等の通院実績も病院での通院実績と同様に見たうえで慰謝料が算定されるケースが、昔より増えている印象があります。
あくまで個人的な印象ですが・・・。

 

なお、鍼灸、マッサージ、温泉治療費なども基本的には、施術費と同様の考え方で処理されることになりますが、整骨院、接骨院での施術よりはやや厳しく判断される(損害として認められづらくなる)ことになるかもしれません。

損害のことで分からないことがあれば、当事務所に法律相談の申込みをしてください!

民法改正で人身事故の損害賠償請求権の時効が5年に延長!

2017-10-24

民法を改正する法律が、本年526日に成立しています。
施行されるのは、公布日である平成2962日から3年以内とされており、具体的にはまだ決まっておりません。

さて、この改正により、交通事故の損害賠償に関しても、いくつかの影響が出ることになりました。今回は消滅時効についての改正をご紹介します。

 

改正前の民法724条は、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」という内容でした。

つまり、人身事故でも物損事故でも、損害賠償請求権は3年の時効(または20年の除斥期間経過)により消滅することになっていました。

 

改正後は、民法724条の内容は基本的にはそのままで(ただし、20年の消滅の法的性質について、除斥期間から時効期間に変更されました。)、新設の民法725条で、「人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効」については、民法724条の3年間とあるのを5年間とする、と定められました。

これにより、物損事故の損害賠償請求権は3年(20年)、人身事故の損害賠償請求権は5年(20年)の時効により消滅することになりました。

 

人身事故の被害者にとっては消滅時効が完成するまでの期間が長くなったので、被害者保護につながる改正といえます!

中間利息控除が民法に規定され、利率が3%になる!

2017-10-11

「中間利息控除」については、聞き慣れない方も多いでしょうが、交通事故などで逸失利益や将来の介護費用など、将来得られるはずの所得や将来支出するはずの額を算定するときに、将来得られるはずの金額の合計額を現在価値に引き直すために、中間利息を差し引くことをいいます。逸失利益というのは、後遺障害や死亡によって、将来得られたはずの所得が得られなくなったことによる損害です。

もともと中間利息控除は民法に規定がおかれていないものの、裁判、実務で定着していたものだったのですが、今回の改正で民法にはじめて以下のような規定がおかれました。

【改正後の民法417条の2】
(中間利息の控除)
第四百十七条の二 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。

たしかに、交通事故によって毎年500万円の収入を10年間失ったと仮定した場合、逸失利益として5000万円を今受け取って、定期預金、投資信託、株などで10年間運用すると、実際には10年後に5000万円を超える金額を取得することが可能になってしまいます。
そこで、毎年一定額の元金を受けとって順次一定の利率(複利)で運用に回していって、10年後に元金と運用利益を合わせた金額の合計が5000万円になるように、一定の利率で現在価値に引き直して損害額を決める必要があるのです。

その計算をしやすくするために、交通事故の裁判、実務では主にライプニッツ係数という係数が使われておりました。上記の例では、10年のライプニッツ係数(利率5%・複利計算)は7.722ですので、500万円×7.722=3861万円となります。

 

また、これまで、この中間利息控除の利率については、(改正前の民法で定める)民事法定利率である5%を用いるのか、金融情勢から3%などもっと低い利率を用いるのかについて裁判で争点になることがありましたが(※最高裁平成17年6月14日判決以降は民事法定利率5%とする取扱いが定着していました。)、今回の民法改正によって、「損害賠償請求権発生時点の法定利率」と明確に定められました。
上記の例では、利率3%での10年のライプニッツ係数(複利計算)は8.530ですので、500万円×8.530=4265万円となり、大幅に増額となります。

 

したがって、今回の民法改正で法定利率が5%から3%に減少することに伴って、損害額全体に対する遅延損害金の利率が下がるため、この点では減額となるものの、逸失利益や将来の介護費用など将来の損害については、複利で控除されていた部分の利率が下がるため結果的に増額となります。

そのため、今回の民法改正は、法定利率に関しては、将来にわたる損害項目があってその額が大きい場合(重大事故)には増額に、将来にわたる損害項目がない、あるいはその額が小さい場合(比較的軽微な事故)には多少の減額になるのではないかと思われます。

 

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